HOW to 研究

このページではできるだけ多くの方のためになるような「研究生活充実のコツ」を紹介するほか、卓越大学院プログラムや学振特別研究員といった大学院生向けの経済支援制度について紹介します。

研究生活チェックポイント

研究計画を立てよう

研究は研究テーマを決めるところからはじまります。特に大学院で遂行可能な、数年のスパンの「研究計画」を立てることは不可欠です。さらに、これを大学院卒業後の研究の展望の中に位置づけていくことができると理想的といえます。
研究計画を立てるには、まずは先行研究を調べましょう。その上で、先行研究に欠けているところを発見することが、新規性のある具体的な研究課題を定めることにつながります。たとえば、理論系の研究なら先行研究の理論の不整合を発見しそれを正すこと、実験系ならある物質の収率を上げることなどが具体的な研究課題として見えてくるでしょう。

ゼミと研究会に参加しよう

多くの研究科では、発表・討論形式をとる演習の授業が「ゼミ」と呼ばれています。大学院生の多くは、講義ではなくゼミを中心に履修計画を立てています。
正規のゼミ以外に、自主的な研究会も多く開かれています。こうした研究会はゼミより参加人数が少なく、互いに専門が近い研究者が集まります。また、ゼミは90~100分程度 という時間の制約があるのに対し、研究会では2時間から長いときには5時間以上にもわたって議論を深めることもできます。このような場を通じて互いの研究の情報を交換し、コメントしあうことは非常に有益です。こうした研究会にも参加して、研究技術を磨きましょう。

研究生活を楽しもう

見落としがちですが、「研究生活を楽しむ」という態度を持ち続けることも大切です。研究のためだけに大学に来るようになると、精神的に追いつめられることになり、結果的に研究にも悪影響が出かねません。また、教員以外に先輩から学ぶことも多いのが大学院での大きな特徴でしょう。先輩方も皆、それぞれの先輩から教わって成長してきた経験を持っていますから、快く相談に乗ってくれることでしょう。特に、論文や、学振特別研究員制度の申請書を書いたときは、必ず先輩に見せてコメントをもらいましょう。個人的に先輩と仲良くなれば、研究発表だけからはわからない、研究にかける想いや長期的な研究目標を聞くこともできるでしょう。

学振特別研究員制度

学会に参加しよう

学会には大きく分けると三つの機能があります。第一に自分の研究の発表の場。第二に情報収集の場。第三に研究者同士の交流の場です。したがって、発表するメリットは当然ですが、発表しない場合にも学会に参加することには大きな収穫になることがあります。各学会のホームページやポスター、研究室での口コミなどで情報を確認しましょう。
世界中から研究者の集まる大規模な国際学会もあれば、毎回数十人程度が参加するアットホームな学会もあります。一般に規模の大きな学会は、第一線の研究者が多く集まるのが大きな魅力です。一方、規模の小さい学会には研究者同士の親睦を深めやすいというメリットがあります。

文献検索のススメ

理系・文系問わず、研究において「文献検索」は最も重要なスキルの一つです。研究や勉強に必要な図書は東京大学OPACを利用して探すことができ、専門的な論文も専用サイトを用いて気軽に検索できます。また、通常は購入する必要がある論文も、多くの場合は学内アクセスやSSL-VPN Gatewayサービスを利用することで無料で閲覧できます。下に主要な文献検索サイトを紹介しましたが、分野ごとに専門的な検索サイトもあるので、まず教員や先輩に聞いて自分の分野で主に使われる検索方法を押さえておきましょう。被引用数やインパクトファクターは自分の研究分野で重要な論文をある程度の目安になります。文献検索をマスターしてたくさん論文を読んでいくことが研究の入り口となるでしょう。

主要な文献検索サイトの紹介

日本語の論文を検索する際に使われることが多い

文献等の学術情報を横断的に検索する東大のサイト

学術論文に特化したGoogleのサービス

主に理系を中心に使われることが多い

Web of Scienceなどへのアクセスには東大の認証が必要なので注意しましょう。SSL-VPN GatewayサービスからUTokyo Accountを使えば学外にいてもアクセスできるので、ぜひ活用しましょう。

図書館の紹介

東大の蔵書検索だけでなく、文献検索サイトも数多く紹介しています。キャンパス間の取り寄せサービス(MyOPACへのログインが必要)も利用でき便利です。

奨学金・研究助成制度

学部生と同様、大学院生にも、様々な奨学・研究助成制度があります。ただし、いくつか学部生とは異なる点があります。申請時に、研究計画書や指導教員の推薦書の提出が求められる場合があります。その反面、研究成果に応じて学部生よりも多額の支援が得られたり、返還義務が免除されたりすることがあります。
ここでは代表的な助成制度を紹介します。他にもティーチングアシスタント・リサーチアシスタントの斡旋や出張費、 書籍費などの援助を所属研究室が個別に行っている場合があります。研究室の先輩に積極的に話を聞いてみましょう。

民間財団の奨学金

支給金額や申請方法、大学の内部選考の有無などは、財団ごとに異なります。詳しくは所属部局に確認しましょう。

民間財団の奨学金の例

月額10万円(6か月毎に支給・返還不要)、1年間、5月11日締切(2021年度)

日本学生支援機構 奨学金制度

返還義務があります。第一種(無利子)と第二種(有利子)に分かれており、修士の間は前者は月額5万円または8.8万円が支給され、後者は支給額を月額5万円~15万円から選択できます。第一種のみ、特に優れた業績を残したと(所属研究科内の審査によって)認められた場合、奨学金の全額または一部の返還が免除されます。

卓越大学院プログラム

卓越大学院プログラムとは、文部科学省・独立行政法人日本学術振興会が推進する事業のひとつです。『新たな知の創造と活用を主導し、次代を牽引する価値を創造するとともに、社会的課題の解決に挑戦して、社会にイノベーションをもたらすことができる博士人材(高度な「知のプロフェッショナル」)を育成すること』を目標とし、修士・博士一貫型の教育プログラムを各大学から募集しています。複数の専門領域にまたがる課題を扱うものや、一般の大学院のレベルを超えた高度な専門性を要する課題を扱うものがあります。
選抜試験や書類選考を経て、プログラム履修生に採用されると、卓越大学院プログラムの授業を履修します。多くのプログラムでは奨励金が支払われるほか、関連する研究・研修費用の全部または一部が助成の対象となります。
学振の対象とならない修士学生にとっては、貴重な資金獲得手段です。さらに、多くのプログラムでは専門を異にする学生・教員が集まっているので、自らの研究の意義を考えたり、別の角度から問題を見つめなおしたりするためには、非常に恵まれた環境だといえます。進級や進学にあたっては資格試験を通過する必要もあるなど負担も大きいですが、自分の研究テーマに照らして、合うものがあれば積極的に応募してみましょう。プログラムによっては修士課程1年の時点で説明会が開催されたり応募の受付が行われたりするので、情報収集は早めに行うようにしましょう。

学振特別研究員制度

東京大学の卓越大学院プログラムの例

東京大学では複数のプログラムが行われています。所属部局によって、応募資格を限定しているプログラムがほとんどです。まずは、自分が所属する部局から応募可能なプログラムを探してみましょう。

法学政治学研究科が主な対象。「急速に変貌しつつある広義のビジネスロー領域について、実務との密接な連携のもとで、理論的考究と実務面に関する知識の獲得の両面において大学院教育を強化すること」を目的とする。

理学系研究科物理学専攻・同天文学専攻・同地球惑星科学専攻・同化学専攻・工学系研究科物理工学専攻・数理科学研究科数理科学専攻が対象。「最先端の物理学と数学を活用」し、「物理学や数学の根本からの基礎知識によって」「最先端を切り拓き世界を一変させる飛躍的な進歩を可能にするようなスキルと知識を身につける」プログラム。

医学系研究科・工学系研究科・薬学系研究科・理学系研究科のそれぞれの研究科内の一部の専攻が対象。「長期的な視点からヒトの健康に寄与できる人材」を育てる。

学振特別研究員制度

最後に、例年多くの大学院生が応募する「学振」を紹介します。学振の応募手続き開始は、早くても修士課程2年次からですが、修士課程に新しく入学された方も、予備知識として知っておきましょう。
学振特別研究員制度(通称「学振」)とは、独立行政法人日本学術振興会による、優れた若手研究者を支援する制度です。学振には、博士課程修了者向けの「PD」と、博士課程生向けの「DC」とがあり、DC はさらに「DC1」「DC2」に分かれています。「DC1」は博士課程1年次から3年間、「DC2」は博士課程2年次以降から2年間の採用ですが、助成内容はおおむね同じです。
「DC」採用者は、以下の助成が受けられます。いずれも返還は不要です。

DC採用者が受けられる助成

研究奨励金
20万円/月。生活費など、使途自由。

研究費
最大150万円/年。専門書・研究機材・学会参加費などに限られ、使途の報告が必要。

学振の申請書には研究計画を書きます。これにより自分の研究を見つめ直せたという声も聞かれます。研究室の先輩に学振の経験者がいれば、研究計画の立て方や伝え方を含め、より詳しい話を聞いてみるのがよいでしょう。

どれくらいの人が採用されている?

2017年度学生生活実態調査より 博士課程在籍者の学振採択・応募状況

学振を受けている29.1%
出願したが、採用されなかった35.0%
学振を受ける必要がない8.1%
その他27.9%

上のデータから、学振に出願した上で採用された東大院生は45.4%とわかります。日本学術振興会のウェブページで公表されているDC採用率が20%程度なので、東大院生の採択率はやや高いと言えるでしょう。

学振の応募プロセス

ここでは令和3年度採用分のDC1・DC2の応募プロセスを時系列順に紹介します。なお、事務関係の日程は、所属部局によって異なる場合があります。くわしくは、各部局の事務にお問い合わせ下さい。

先輩の体験談

学振を申請し内定に至った先輩の体験記をお届けします。

Kさん(農学生命科学研究科 博士2年)DC2(農学・環境学)令和2年度採用

私はDC1申請の時期は進学するつもりがなく、申請を行いませんでした。博士1年のときに初めてDC2を申請するも、不採用となり、2度目の挑戦でDC2採用となりました。前回の不採用体験を交えながら体験をつづりたいと思います。

研究業績について

DCの申請書に記入する主な内容は「研究成果」「研究計画」「研究業績」「研究者としての資質」の4つとなっています。もちろんどの欄も大事ですが、とにかく業績、特に論文数が合否に大きく影響すると言われています。私の場合、前回は筆頭著者の論文が一報もありませんでした。大変ありがたいことに指導教員にサポートしてもらえたこともあり、修士論文をベースに筆頭著者で論文を投稿することができました、他にも学会での発表や受賞など着実に業績をあげることが内定につながったと感じています。

分かりやすい申請書類

DCの選考は「我が国の第一線の研究者で構成される特別研究員等審査会」(日本学術振興会HPより)の審査員6人により行われます。短い時間で審査員に伝えたいことが伝わる申請書を書くことがポイントになります。私の場合、前回は指導教員に見てもらっただけでした。申請書を書き上げる時間も短かったこともあり「荒削り」な申請書だったように思います。今回は研究室の先輩や後輩、さらには私の研究を詳しく知らない友人にも申請書を見てもらいました。多くの人から意見をもらうことで、自分では気付かないミスにも気付くことができました。また、学会主催の学振セミナーに参加して、内定者の申請書を拝見して、上手な申請書を書く技を勉強してきました。様々なグループがセミナーを実施しているようなので、申請前に参加してみるといいでしょう。
このほかにも東大FFPを受講したり、海外の研究機関に1週間滞在して研究を行ったりと様々な経験をしてきました。申請書でアピールするネタになったのはもちろんですが、研究者としてスキルアップにつながる経験ができたように思います。

研究業績について

東大FFPとは、東京大学フューチャーファカルティプログラムの略。院生や若手教職員向けに教育能力の向上を目的とするプログラム。大学での講義の作り方を学ぶことができる。