東大生協ビジョン 2025

はじめに

 東京大学消費生活協同組合(当初の名称は東京帝国大学協同組合。以下、東大生協という)は1946年6月7日に設立され、このときからすでに70年を経過しました。また1948年に消費生活協同組合法(以下、生協法という)が成立し、1949年2月23日に、同法の下での法人格を取得するために改めて創立大会が開かれ、現在に至っています。これまでの歴史を踏まえ、これからの東大生協のありかたを示すことが東大生協ビジョン2025の目的です。
 大学の使命は研究と教育にあります。またこれらをつうじた社会貢献も大学の役割として欠かせません。とはいえ大学構成員も人間ですから、衣食住をはじめとする生活を欠いては学修や研究に専念することができません。大学生協はこうした大学構成員の生活の改善向上を図ることを目的としています。
 協同組合は19世紀のイギリスのロッチデールにおいて、労働者たちが自発的に出資して、ロッチデール・パイオニアーズ協同組合を組織したことから始まりました。そこで目ざされていたことは、良質な商品の提供であったり、公正な取引であったり、民主的な経営でした。ここで生まれた考え方は現在の日本の生協法のなかにも生き続けています。
 東大生協は、東京大学の構成員(学生や教職員をはじめとする関係者)が組合員となって出資し、組合員みずからの生活の文化的経済的改善向上を図ることを目的とした経済団体です。東京大学は大学憲章のなかで「世界最高水準の教育・研究を維持・発展させることを目標とする」と宣言していますが、東大生協はそうした目標を協同組合の精神 に則り福利厚生の面から達成していく存在です。
 この任務は今後も変わることはありませんが、東大生協を取り囲む環境が変化してきていることも事実です。大学の法人化、学校教育法の改正による東京大学のガバナンス改革や生協法の改正をはじめとする新しい環境に適応することが東大生協の課題です。東大生協はこれまで以上の競争的環境のなかで自己点検・自己革新につとめながら存続し、安全衛生を最優先とし、健全な経営のうえに、組合員の生活の文化的経済的改善向上を図っていきたいと考えます。

ICA(国際協同組合同盟)は「協同組合の原則」として次の七つを定めています。①自発的で開かれた組合員制。②組合員による民主的管理。③組合員の経済的参加。④自治と自立。⑤教育,訓練及び広報。⑥協同組合間協同。⑦コミュニティへの関与。

1. 組合員が大学で充実した生活を送れるように

 東大生協は、東京大学の学生・教員・職員を中心とする組合員によって構成され、生協職員とともに、組合員の大学での生活をより充実したものとするために多岐にわたる事業・活動を展開している組織です。組合員が大学で過ごす時間を充実させることが東大生協の使命であり、そのために日々尽力しています。
 しかしながら、社会の多様化に伴って、大学において組合員の望む生活の姿も多様化している現在、東大生協がこの使命を果たすことは段々と難しくなってきています。組合員が生協を運営しているという意識が薄まっていることや、それに伴い組合員と生協の関係が希薄になりつつあることがこの難しさに拍車をかけているのでしょう。その結果として、経営が段々と不安定になっているのが東大生協の現状であると考えています。実際、2015年度までに解消することを目指していた累積赤字(2006年度の駒場コミュニケーション・プラザの運営開始、柏キャンパス店舗への設備投資に伴い2億6千万円まで膨らみました)は、この間の経営努力により投資分を回収し、累積赤字も6千万円(2016年度決算時点)まで縮小したものの、いまだ完全に解消するには至っていません。単年度決算は黒字を計上しており、2017年度の中央食堂改装への投資など、必要なだけの資金は確保できていますが、累積赤字を解消し、生協の健全な事業運営を行うには、組合員と生協が離れている現状を打開することが急務です。

 東大生協は非営利事業体であり、その事業・活動は利益の分配を目的としたものではありません。事業・活動一つ一つを見れば、同じようなサービスを提供する事業体はいくつも存在します。しかし、たとえ多くの収益を見込めるわけでなくても、組合員の要望する物品やサービスを進んで提供するのが東大生協のあるべき姿でしょう。こうした自覚の上に、組合員の要望をしっかりと受け止め、積極的に応えていくことで、組合員に「生協があってよかった」と実感してもらい、より多くの機会で生協を利用してもらえるようにさらなる努力を重ねていく必要があると考えています。

 東大生協に与えられた使命を果たし、組合員が大学で充実した生活を送れるように、このビジョンでは、「多様化している組合員の要望に真摯に応える生協」、組合員が、自らが組合員であることを実感できる生協」、及び、「東京大学との協力のもと、充実した生活の実現に貢献できる生協」を目指します。

2. 東大生協の目指す将来像

1)多様化している組合員の要望に真摯に応える生協

 近年は、東京大学の方針として、大学構成員の中で占める割合が少なく生協での対応が遅れがちであった女子学生や留学生が重視されてきました。また、社会的にも、障がいのある方や多様な宗教的背景を持つ方への対応が強く求められています。組合員が多様化することで組合員の要望も多様化してきていることでしょう。そういった、組合員一人ひとりが大学で充実した生活を送るにあたって望んでいること一つ一つに真摯に向き合い、1つでも多く実現していきます。特に、東大生協の組合員は学部学生・大学院生が多くを占め、また、日本の大学のトップランクに位置する東京大学では学修と研究に対する高いレベルのサポートが望まれています。この要望に応えるため、学部学生・大学院生の学びと自立を支援する事業に東大生協は意欲的に取り組みます。
 また、組合員の声を拾い上げるだけでなく、1人でも多くの組合員に生協の事業を知ってもらい利用してもらえるようにこれまで以上に積極的に生協の活動を広報します。

2)組合員が、自らが組合員であることを実感できる生協

 東大生協の事業を通じて、組合員一人ひとりに充実した大学での生活を送ってもらうためには、東大生協の職員・役員の力だけでは足りません。組合員の協力・運営への参加があってこそ、組合員自身の、ひいては、自分以外の他の組合員の大学での生活をより良いものにすることができると考えています。組合員が積極的に協力したい、参加したいと思えるような生協を目指していきます。
 加えて、組合員の望む大学での生活の姿を実現するためには、組合員と生協店舗の一対一の関係だけでも足りません。生協の事業・活動を通じて組合員同士のつながりを強固にし、互いの生活を充実したものにする道をともに探っていく、つまり、組合員同士が助け合っていくことが、一人でも多くの組合員に満足した大学での生活を送ってもらうことに繋がっていくものと確信しています。そのような、組合員を相互に結びつける共同体としての役割を果たしていきます。

3)東京大学との協力のもと、充実した生活の実現に貢献できる生協

 東大生協はこれまで70年以上にわたって東京大学とともにあり、東京大学の理念に賛同して、その実現のために惜しまず努力してきたと自負しています。今後も、東京大学と緊密に連携し、東京大学の理念の実現のために、生協として出来ることには惜しまず協力していきます。また、単に東京大学と協力するだけではなく、学生自治の一端を担う組織として、組合員の望む大学での生活を実現するために東京大学に働きかけや協力を求めていきます。特に、大学内の福利厚生についてはまだまだ不備・不足や改善を求められる点が多くあり、東大生協はそういった点を補完できるような存在でありたいと考えています。

3. 組合員が大学で充実した生活を送れるようにしていくためのアクション

①組合員の要望を的確に把握するための取り組みを広げ、一つでも多く実現します[将来像1と関連]

  • 組合員一人ひとりの要望を的確に把握するために、「ひとことカード」や「組合員アンケート」の取り組みを強化します。
  • 留学生対応を強化します。特に広報物や店内掲示の全面英語化を目指します。
  • 学生・大学院生の勉学・研究をサポートする事業に引き続き取り組みます。
  • 総代会をはじめとする、組合員の意見を直接聞ける場を強化し、多くの組合員の意見を民主的に集約できるように改善します。

②生協の事業を広く知ってもらうための活動を強めます[将来像1、2と関連]

  • 店舗のTwitterアカウントやCoop News、各組織委員会の発行する冊子などの広報媒体を効果的に活用します。
  • 組合員に対して、生協に加入するメリットを実感できるような広報をしていきます。
  • 生協が組合員の要望をどのように把握していて、それをどう実現しようとしているかを発信できる仕組みを整えます。

③生協の事業を通じて組合員同士の協同を強めます[将来像2と関連]

  • 組合員の大学での生活に関する情報を組合員から生協店舗に伝えてもらうための仕組みを整えます。
  • 組合員に商品や食事メニューを考案してもらえる仕組みを整えます。
  • 組合員に積極的に生協の運営に参加してもらい、組合員目線でのサービス提供を強化します。
  • 新学期事業において先輩・後輩間の交流を強め、1人でも多くの新入生の不安を取り除きます。

④キャンパス内の福利厚生を充実させます[将来像1、3と関連]

  • 組合員の意見を大学に発信し、大学と協力して学内環境の改善に努めます。
  • より良いサービスを提供するために生協店舗の設備の改修に積極的に取り組みます。
  • 共済事業を通して、組合員の健康を守る活動を広げます。
  • キャンパスの食環境を整備します。
  • 新入生が安心して大学生活を送れるよう駒場キャンパスの福利厚生を充実させます。

⑤健全な運営を目指し、適宜必要な投資を行います[将来像1、2、3と関連]

  • 中央食堂や駒場コミュニケーション・プラザPFI事業など、必要な設備に適切に投資します。
  • 正規職員、非正規職員を問わず、東大生協で働く職員のワーク・ライフ・バランスの達成のために労働環境を見直し、誇りや生きがいを持って働くことのできる職場にします。
  • より良いサービス提供のため、職員の育成や研修の体系を見直します。